ヨ−ロッパ選手権ニュ−ス from スプリット/クロアチア          home     



98EPOS Team Japan in クロアチア

Splits Boys

Atsuko   Tony

Ai   Wakako
Hiroyuki Robert

98EPOS Team Japan
Atsuko Hirai Wakako Tabata Ai Ikemoto 
Yuya Ishikawa Reo Takahashi Hiroyuki Umeno Fry Anthony Yoji Yukinori Tukiyama 
Noboru Muraki (coach) 

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OP級ヨーロッパ選手権で銅メダル 田畑和歌子選手

 98年OP級ヨーロッパ選手権はアドリア海に面したクロアチアの古代都市スプリト(Split)に35カ国270艇が集まって行われ(8/1-6)、日本は女子銅メダル(田畑和歌子)、男子12位(築山幸典)という歴代最高の成績を記録しました。日本代表チームは、田畑和歌子、平井敦子、池本藍、築山幸典、高橋怜生、フライ・アンソニー、梅野浩之、石川裕也の8選手とコーチ村木昇(21歳)、監督久保卓哉、サポート高橋薫、ロバート・E・フライの総勢12名で参加しました。
 クロアチアといえば、ボスニア・ヘルツェゴビナ、サラエボ、地雷、民族紛争などの言葉を思い浮かべますが、91年に独立を果たした後は、テニスのイワノセビッチ、サッカーのボバンなど世界的な名選手を世に送り出しているスポーツ大国で、ヨットOP級でも95年ワールド3位、98年ワールド3位という強豪国です。今回も男子は通称「バンビ」と呼ばれているかわいいクロアチアの選手が優勝しました。ちなみに彼はこの大会の優勝をねらって、ワールドの代表を辞退した選手でした。
 4月以来インターネットのE-mailを利用してクロアチアやデンマークと綿密に連絡を取り合っていたため(現地合宿での宿舎、コーチボート、レンタカー、チャーター艇、合同トレーニングなど)、何の不安もなく5日前から現地に入ることができました。以下項目ごとに報告をしていきましょう。

<計測>
 セールは国内でOP協会の石橋氏と大原セールの大原氏の再チェックを受けていたため問題なくパスしましたが、ウイナーのチャーター艇のうち、2艇の船体重量がそれぞれ50gと160g軽く、木片を貼り付けました。この作業は現地ディーラーのダルコ(Darko,28歳)さんが滝のように汗を流しながらしてくれました。彼はJ24によるマッチレースの現役選手で、クロアチアヨット協会の広報誌の裏表紙に顔写真が出ているトップセーラーでした。同じくレーザー級のトップセーラーも運営艇に乗って運営に参加するかたわら、大会側所有のゴムボート全てのメンテナンスを毎日行っていました。

<海面の情報収集>
 陸と島で囲まれたレース海面、30度以上の気温、を考えると、海風陸風の大きなパターンと地形の特徴がからみあった風が吹くと予想されましたから、村木昇コーチが特注で作成して持ち込んだコンパス、風向計、風速計付きの機器が大活躍。彼と同じく江ノ島ヨットクラブから参加した、日本において最も経験豊富なセーラーであるロバート・E・フライさんは、海上で計測したデータをゴムボートの上でポケコンに入力し、時間とともに変化する風向と風力のパターンをノートパソコンでグラフ化して選手に見せてくれました。そのため、選手とコーチはほぼ風の傾向を把握することができました。彼は風のデータを集めるために、チームの休息日の観光をキャンセルして、一人で海面に出てデータを取ってくれました。

<海面の情報収集 その2>
 データをグラフ化した翌日、ロバートさんがパソコンをバーに持ち込んで画面のデータを見ていると、興味を示したポーランドチームがのぞき込んでこれはなんだ、と聞きます。説明するにつれて彼らの顔の表情が徐々に硬直してくるのが分かりました。参加チームのすべてが欲しがる情報を日本チームがデータ化しているからです。しかし彼らの次の言葉は私たちを驚かせました。
 「自分たちは、風のデータを集めてもう7日になるよ。」
彼らは私たちのデータがある一日のものであることを知って、こう言ったのです。大会が始まる二日前のことでした。

<海面の情報収集 その3>
 97、98年のワールドチャンピオンを生み出したイタリアチームのコーチ,マッシモ(Massimo)は、来年のヨーロッパ選手権開催国ギリシャの若きコーチ,ヨアニス(Yoannis)と組んでコーチボートに乗っていましたが、第一レースのスタート前には必ずレース海面の右、中、左、にボートを止めて風のデータを取った後スタートラインに戻ってきていました。またフィンランドのコーチ、トーマス(Tomas)とスウェーデンのコーチ、パー(Per)が乗ったボートが第一上マークの風をチェックしに行ったのを観戦艇のデッキで見た私が、村木コーチと同乗しているデンマークコーチ、モルテン(Morten)の無線機に向かって、「モルテン、今パーとトーマスが第一上の風をチェックしているから、彼らが戻ってきたら、風の様子を聞いてみてくれよ。」と言うと、デッキにいる各国の監督は一瞬シーンとなって緊迫していました。

<海面の情報収集 その4>
 梅野氏のご厚意で新品3台の無線機を持参した私たちは、観戦艇(久保、高橋)、プレスボート(ロバート)から得られる風の変化の情報を、刻々と村木コーチに伝えました。海面より高い位置からだとよく見えるからです。村木コーチはそんな情報を聞いて、瞬時に海面全体の風の傾向を把握していました。それが選手に伝わって行くわけです。

<インターネット>
 最近の国際大会はその日のレース結果をその日のうちに世界中の人に提供するシステムになっています。今回は日本チームのロバートさんが大活躍をしました。彼は撮影したデジタルビデオの画像を編集して、大会事務局のボス、ザトコ(Zlatko)、ミランダ(Milanda)夫妻に渡し、それを元にウエブマスターが大会ホームページを作成したわけです。彼は大会に無くてはならない重要な人物として、急遽プレスの役割を依頼され、毎日プレスボートに乗ることができました。世界中の人が見た画像は彼が提供したものです。大会本部の電話回線を無料で使用することができるようになった彼は、日本OP協会のホームページにも日本向けの画像とレポートを送り、日本でもその日の様子をその日のうちに見ることができました。

<トップセーラーのセーリング>
 3-4m/secの風のレースでした。第二マークに9位で来たアルゼンチンの選手(セバスチャンSebastian)の回航動作に感心しました。彼はマーク回航と同時にジャイブをしたのですが、ブームを反してその下をくぐり、反対側に座るために立ち上がりながら右手でセンターボードを引き上げたのです。ブームが反って座った時には、センターボードは一杯に引き上げられていました。他の選手は、ブームをくぐって反対側に座った後(第一段階)、手を伸ばすか、立ち上がってセンターボードを上げます(第二段階)。二つの動作があるため、その分ジャイブの完了が遅くなり、ローリングを誘発し、またセンターボードによる低速化の時間が長くなります。特にセールに集中するのはもっと遅れます。9位から20位までがダンゴ状態でしたから、彼はマーク回航でススッと前に出て、第三マークまでのランニングで後続艇の影響を受けずに走ることができました。それどころか8位のギリシャの選手に迫っていました。彼はこのレース、ペルーに次いで2位でフィニッシュしていました。こうした基本動作が身にしみついているのは、日頃の練習でそれをしているからで、それを指導しているコーチの確かな底力を感じることができました。選手の実力はコーチの実力でもあるわけです。

<トップセーラーのセーリング その2>
 97,98年のワールドでチームレースを連覇したのはペルーでした。フジモリ大統領で日本にもなじみ深いこの国は、今や世界のトップクラスです。アルゼンチンやブラジルの強豪国から近いし無理もない、というような漠然とした感想しか各国のコーチから聞くことができませんでしたが、意識的に注目して見た結果、やはりペルーのジョエル(Joel)選手には感心しました。彼は150cm35kgくらいの軽量選手で軽風のレースを[1.5.1.29.2]でフィニッシュしていました。彼が5位以内でフィニッシュしたレースは全て、真ん中から左右に大きく出ないコースを引いていました。左右に分かれた集団をよく見ていて、どちらがバウを出しているかと風の大きな傾向を頭に入れながら、やがて振れ戻してくる風を丁寧に拾ってタッキングをしていました。29位の時は風の振れが一方に片寄ったためにどうすることもできなかったのですが、反対側にいたら80位代になっていたでしょう。軽量選手は放っておいてもスピードがあるため、レースプラン(ストラテジー)を立てなくても上位でフィニッシュできることが多いのですが、体格が大きくなったときに必ず壁にぶつかります。しかし彼だとその壁は難なく乗り越えられるでしょう。スピードという武器を磨きながら、それを利用できる時期にレースプランという戦略を同時に磨いているからです。これもペルーのコーチの確かな眼力を感じました。ペルーは選手がもまれて強くなったのではなく、コーチが力をつけたのです。

<スポンサー>
 海外レースに参加するための費用は巨額になります。今回も550万円かかりました。そのうち航空券などの移動費は330万円を占めます。今年の遠征ではルフトハンザ航空が趣旨を理解してくださり、スポンサーとして一人分の往復航空券を提供してくれました。ヨットハーバーを歩く日本チームが「Lufthansa」のロゴ入りTシャツを着ているのを見た各国の人は、「ルフトハンザがスポンサーになっているんだね」と声をかけてくれました。そうだと説明すると、「それはすごい、うらやましい」と言っていました。特にドイツチームの美しい女性キャサリン(ジュリア・ロバーツそっくり)とはそれをネタに話がはずみ、彼女とはすっかり意気投合しました。ルフトハンザ航空に感謝いたします。
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